ごあいさつ (開業の前年に書いたものです。)

小さい頃より、旅行が大好きでした。

知らない場所に行くということが、とても嬉しくて、
ドキドキと胸が弾むような気持ちを与えてくれたから。
そして旅から帰ってくると、自分がちょっとだけ大きくなれたような
ささやかな充実感があったから。

大人になって社会に出て
初めて勤めさせて頂いた会社は、旅行会社のカウンター。
たくさんのお客様が、まだ見ぬ異国の地を楽しみに、
もしくはリフレッシュさせてくれるお気に入りの国へと旅立っていかれました。
月日が流れて、もっともっとお客様の近くでサービスをしたいと思い、
和歌山県 熊野本宮にある旅館のフロントに転職させて頂きました。
ここでも、多くのお客様が、熊野本宮という場所で疲れをいやされ、
非日常の穏やかな時間を過ごして帰られました。
ある時にはバスツアーの添乗員として、お客様と御一緒に旅をするという経験もさせて頂きました。

どれほどたくさんの方が、忙しい毎日の息抜きに、自分へのご褒美のために、
旅というものを楽しみにされているか。
もしかすると、ある人にとっては、旅がその後の人生を変えることさえあるかもしれません。
十数年の社会人生活すべてを、旅に関わる仕事に従事してきた私にとっては、
旅の素晴らしさを実感し、旅の魔力というべきものの、トリコになっています。

そして今。
幸運にも、自分なりの宿を作れるという機会を得ることができ
スタートラインがいよいよ目の前に近づいてきました。
旅にずっと関わってきた私としては、今度は旅人の皆さんに温かい一夜の思い出を作って頂きたい。
おおげさに言えば、私の人生といつも共にあった「旅」に恩返しがしたい。
そういう一念で、私の宿を始めたいと思っています。
もちろんここまでの道のりは、予想外のことが起こったり、自分の考えの甘さに悩んだりの連続でした。
また、スタートしてからの方がもっともっと険しい道のりになるのでしょう。

このウェブサイトで、私の開業に向けての試行錯誤、七転八起の次第を御覧頂き、
皆様のお知恵をお借りして、熊野に訪れる旅人の思い出に残る宿を一緒に作り上げて頂ければ嬉しいなぁ、と考えております。

そして、熊野本宮の地で、皆様と実際にお会いできる日を、心より楽しみにお待ちしております。

最後になりましたが、当民宿開業計画に関し御尽力下さいました皆様方に心より御礼申し上げます。

平成二十年十一月
あるじ　山本　直也